ごめん、やっぱすき

うまく言えないけど。

染色

インターセプト、Undressからだいぶ期間が空いたけれどどうしても書きたくてたまらないのでやっぱり3つめのお気に入りについても書いておこうと思う。

読んだ感想としてまず思ったこととしては、加藤シゲアキが書いてるの…?という驚きだった。

確かにシゲアキっぽいといえばシゲアキっぽいのだがアイドルが書いているものとしては触れてはいけないものに触れている感じがして焦った。苦しくて楽しかった。

小説というのは個人的にスタイリストと似ていると思っている。ただ状況をまとめると情けない男の姿を描いているだけなのに、加藤シゲアキがスタイリングするとひとつひとつの言葉が何段階も質の上がった言葉に置き換えられ、頭の中に浮かぶその場面に熱だとか思いだとかどんどん要素が追加されてただのマネキンだった言葉なんて思い出されないほど圧巻のスタイリングが完成しているように感じた。

何もかも思い通り、手に入れようと思えばなんだって手に入れるし、この価値がわからない奴はそいつ自信に問題がある、けれど俺は自分自身を俯瞰で見ることができる…みたいな本当にただただ面倒くさい主人公。なのにちょっとした悪戯が思わぬ展開へと発展したときや彼女のことを思い出すときは情けないほどに単純な、ただの男だった。

複雑なものに巻かれてミステリアスに感じられる相手の女の子はただ純粋に好きなものを追う女の子だったように思う。

複数の色を重ねられていくと色の原理で考えれば黒になっていくはずなのに、矛盾やプライドでぐちゃぐちゃに塗り重ねられたその男は最後には白だったように思う。色に囚われて色に翻弄されていたのに最後は光に惹かれて白になっているようで、そこに抗えなかった情けなさがどうにも私は好きだと思った。

ゾクゾクしたのがインターセプト、ドキドキしたのがUndressだとすれば、ニヤニヤしたのが染色な感じがする。そうそう、結局逆らえないんだよね?って汚れた気持ちでニヤニヤする自分自身がいた。

結論、加藤シゲアキって怖い。