ごめん、やっぱすき

うまく言えないけど。

Undress

もういっそお気に入り全てについてまとめておこうと思ったので今回はUndressについて書こうと思う。今回もぼや〜っとネタバレがあると思うので嫌な人は自己防衛をお願いしたい。

私的な話をすると私は生きる上で何より大切なのは仕事だと思っていて、「仕事と私、どっちが大事なの?」と訊いてくるような女性とは一生分かり合えないと思う。何かのインタビューの、そのような質問をされたときどうするか(どう思うか)という問いに対して加藤シゲアキさんは「そんな質問をされた時点でちょっと…」と答えていたと思うのでそこに関してはシゲアキに完全同意。結婚して欲しい。

さて、ここで本題に戻る。つまり私は仕事大好き人間でなんだかんだ会社の犬のような性格なのでこの話は衝撃的だった。憧れた。溢れ出る野心を隠して社内で能力を発揮する人間から発せられた、会社の犬になんかなるなよ、という言葉は私の興味をひくには十分だった。

真面目な勤務態度、自分を慕う後輩、従順な恋人。こういう人のパーソナルスペースに入るのは難しい。公私における公の割合が大きい人、というのは基本的に利害が関わらないと仕事仲間(相手)から交友関係という枠組みに入るのも難しいのではないかと思う。だからこそ一旦パーソナルスペースに入れた人間には甘くなる。今回のお話はそれが全てかなあ…一旦信頼出来ると思うとチェックが甘くなる。けどそれが人間らしいというか。

中盤からの大どんでん返し、本当に楽しかった…ボキャ貧のため本当に楽しかった、としか表現出来ない自分が歯がゆい。短編だからこそのこの疾走感。凄まじいスピードで回収されていく伏線。終盤に差し掛かり、読者のだれもが黒幕を把握した頃に鳴る携帯電話。これから先のことを予見した私達読者は結末に向かうその一本の電話を、下世話な好奇心を持ちつつ冷静を装いながら読みすすめたのではないかと思う。他人の不幸は蜜の味、とはよく言ったもので知りたくてたまらないという気持ちに支配される。

こんな綺麗な脱サラ起こりっこない、なんて思いつつも、心のどこかで成功してほしい。成功する世界であって欲しい。とも願っていた。ある種の憧れでもあった。自分は自分の為に働いていて、自分こそがこの会社の軸である。そう感じながら会社を去る姿は主人公にとって自己肯定感を得る上で限りない喜びだったと思う。信頼していた相手に手のひらを返され転落したあと、あれほど軽視していた相手に手を差し伸べられる惨めな気持ちを想像するとこれまた加藤シゲアキの残虐さが感じられてゾクゾクする。

序盤に、パーソナルスペースの話をしたと思うが、その甘さこそがこの人の人間たる所以なのだろうなと感じずにはいられなかった。完璧を演じながらも詰めの甘さが命取りになった。その甘さが、最後には愛おしくてたまらなくなった。私は人が好きだ、と思った。一歩ひいてみる人間がこんなに楽しいのなら、読者をそんな気持ちに支配出来る加藤シゲアキはよほど楽しいと思う。

加藤シゲアキになりたい。